
火災保険の全損とは?必ず知っておきたい7つのポイントを紹介。
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ファイナンシャルプランナー 髙橋 尚
【経歴】 大学卒業後、都市銀行に約30年間勤務。提案業務推進と内部管理両面で幅広い銀行業務を経験。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、コンプライアンス・情報セキュリティ・金商法対応等の内部管理責任者等のマネジメント職を経験。2012年FP1級取得。現在は公益社団法人管理職。
今回は火災保険について知っておきたいポイントについてご紹介していきます。
どんな火災保険に入ればいいの?などの基本的な内容ではなく、火災保険で全損と判断されるのはどんな状態なの?や、見落としがちな補償ってどんなもの?など火災保険について少し深堀りしていきたいと思います。

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火災保険で知っておきたい7つのポイント
ポイント① 火災保険の全損ってどんな状態のこと?
火事で家が燃えてしまったら、柱が1本でも残っていると全損にならないから、保険金が支払われない・・・・と思っている方が沢山いらっしゃいます。
しかし、柱が1本残っていても住めない状態だったら、全損扱いになります。
火事で家がほとんど焼けてしまった場合、保険金額を上限として修理や再築、再取得のために必要となる実際の損害額が保険金として支払われます。
※自己負担額や免責金額がある場合は、差し引いた金額が保険金となります。
保険会社によっては、
・保険の対象である建物の焼失・流失または損壊した部分の床面積が、保険の対象である建物の延床面積の80%以上である損害
・建物の損害の額が再取得価額(保険金額)の80%以上になった場合 のことを全損(全焼・全壊)と定義しています。
ポイント② 火災保険の保険金額が全額支払われるのはどんな時?
火災保険をかけていても、多くの人がどんな時に保険金額が支払われるのか知りません。
せっかく保険料を支払っていても、どんな時にいくら保険金額が支払われるのか知っていないと、無駄な費用を支払っている気分になってしまいませんか?

FP
・全焼した場合
・修理、最築、再取得のための金額が保険金額を上回った場合
・延べ面積の80%以上が焼失または流失した場合
・損害額が再取得額(保険金額)の80%以上になった場合
に保険金額全額が支払われます。
損害保険金の支払いが1回の事故で保険金額の80%を超えたとき、保険契約が終了する保険が一般的です。
つまり、保険金額全額支払われた時、保険契約は終了してしまいます。
ちなみに、保険金額の80%を超えないかぎり保険金の支払いが何回あったとしても、保険金額が減額されたり保険料を追徴されたりすることもなく、契約は満期日まで続きます。
ポイント③ 火災保険をかけていれば全てカバーされる?
火災保険は家の保険なので、何でも家のことなら補償される!と思っている方がいます。
しかし、保険金の支払いには条件があったり、自己負担額が設定されていたりする場合もあるので、全てをカバーしてくれるわけではありません。
火災保険こんな時は、補償されない!?火災保険の選び方もご紹介!でもご紹介していますが、火災保険は、損害が発生した時、故意あるいは重大な過失、戦争・内乱などの事変や暴動によるもの以外は、基本的には保険金が支払われます。
保険金の支払い条件とは?
- 水災
・再調達価額の30%以上の損害が発生した場合
・床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水による場合
に限られることがほとんどです。 - 風災・ひょう災・雪災
・損害の額が20万円以上の場合にのみ保険金が支払われる(20万円フランチャイズ)
・自己負担額が0~10万円程度設定されている
ため、実際に修復に必要な金額から自己負担額を差し引いて保険金が支払われます。 - 破損・汚損等
・建物・家財それぞれに1万円の自己負担額が設定されている
・家財が保険の対象の場合、1個または1組ごとに30万円が保険金の限度

FP
補償をつけていれば、いくらでもなんでも保険金が支払われるわけではありません。
どんな損害に対して保険金が支払われて、どのような損害時にいくらの自己負担額が設定されているかしっかり理解した上で、必要な補償を検討する必要があります。
ポイント④ どの補償を対象外にすると保険料が安くなるの?
火災保険は補償を選ぶことができることがほとんどです。
その補償の中で何の補償を対象外にすると保険料は安くなるのか?と気になる方も多いと思います。

FP
大雨や集中豪雨による浸水や水害、土砂崩れなどを補償する「水災」は保険料に占める割合が大きいため、補償の対象外にすることで大幅に保険料を節約することができます。
水災を補償対象外にできる建物とは?
水災を補償の対象外にできるのは、浸水リスクの低い建物(高台の一戸建て・マンションの高層階など)です。
浸水リスクを確認する方法としては、
- 洪水ハザードマップor浸水予想区域図・・・大雨や河川が氾濫した際に想定される浸水の深さを地図で表したもの
- 浸水履歴図・・・過去の水害記録
- 土砂災害警戒区域に該当していないか
などがあります。
また、「風災」も保険料に占める割合が比較的大きいため、補償の対象外にすると保険料を節約できます。
風災を補償対象外にできる建物とは?
風災を補償の対象外にできるのは、風災リスクの低い建物(台風や雪が少ない地域・台風や風に強い建物など)です。
風災リスクを確認する方法としては、
- 土地の立地条件
- 建物構造
- 屋根形状
- 築年数
などがあります。
保険料を安くする目的だけで、「水災」「風災」両方を、補償の対象外にするのは危険です。
それぞれのリスクを確認してから、必要がない場合にのみ補償を対象外にすると良いでしょう。
ポイント⑤ 火災保険の中で、見落としがちな補償って何?
火災保険に加入する時には何か見落としている補償はないかな?と気になると思います。

FP
見落としがちな補償は、損害発生時の諸費用を補償する「費用保険金」です。
建物や家財の損害を補償してくれるのが火災保険の「損害保険金」ですが、建物や家財以外の補償をしてくれるのが「費用保険金」です。
例えば
・焼け跡に残る物を片付けたり清掃したりする費用
・ホテル代やアパート代などの一時的に必要な仮住まい費用
など、建物や家財の補償以外にも諸費用が必要になることがあります。
大きな損害の際には、必要になる補償ですので見落とされがちですが覚えておきましょう。
ポイント⑥ 火災保険って定期的に見直した方が良いの?
火災保険に入った方は火災保険は入ってしまえば、もう大丈夫。と思っている方が多いと思います。
しかし、火災保険は見直しが必要です。
なぜ、見直しが必要かというと、火災保険は入居直前のタイミングであわただしく加入してしまうことが多いため、補償内容をよく理解していない状態で不十分な火災保険で契約している方や、余分な補償まで契約している方が沢山いるからです。
見直しが必要な代表的なパターンを紹介
- 補償を受けられるのに自己負担で直してしまうパターン
- かなり前に長期契約して過大な保険金額が設定されたままになっているパターン
- 火災保険のオプションで付けた個人賠償責任補償が他の損害保険にセットされていて補償が重複してしまっているパターン
- かなり前に時価評価で契約してしまっているパターン
- 火災保険を建物にしかかけていなくて、家財には火災保険をかけ忘れていたパターン
- 火災保険に加入した当時から家族が増えて家財の保険金額を変えたほうが良いパターン
このように、火災保険に加入していた当時と状況が違うパターンや補償の見直しが必要なパターンがあります。
火災保険の見直しをしないと、万が一の際に十分な補償を受けることができなかったり、無駄な保険料を支払うことにもなります。
家財の保険金額は契約期間中に増額したり減額したりすることが可能ですので、火災保険契約から時間が経過しているときは、補償内容が現在の状態で適切な内容になっているかどうか見直してみることが大切となります。
ポイント⑦ 賃貸住宅でも火災保険に入らなければいけないの?
賃貸住宅に住んでいても、火災保険って入らなきゃいけないの? という方もいるかもしれません。
賃貸住宅の場合は、建物ではなく家財のみに火災保険をかける必要があります。
これは、住宅を借りている人が賃貸住宅を焼失させてしまっても、借りている人に故意や重大な過失がない限り、失火責任法によって法律上の賠償義務は生じないためです。
しかし、住宅を借りている人の義務もあります。
善管注意義務・・・
大家さんに対し賃貸住宅をしっかり管理しなければならない義務
原状回復義務・・・
賃貸借契約に基づいて賃貸住宅を現状に回復して返還しなければならない義務
このような義務があるため、最終的には損害を賠償しなくてはなりません。
借りている人の故意や重大な過失で損害が生じた場合は、大家さんが建物に火災保険を掛けていれば保険金を支払った保険会社から賠償請求される恐れもあります。
そのため、家財の火災保険に「借家人賠償責任補償」・「個人賠償責任補償」というオプションをセットすることが一般的です。
借家人賠償責任補償・・・
賃貸住宅を借りているときの賠償責任を大家さんに対して補償するオプションです。
個人賠償責任補償・・・
洗濯機のホースがはずれて下の階に水を漏らしてしまった水濡れなどの場合に補償するオプションです。
火災保険と家財保険は違うのか?
賃貸住宅に住んでいる方が、火災保険について調べると、火災保険ではなく「家財保険」という言葉が出てくることがあります。
家財保険は家財にのみかける火災保険のことです。
火災保険と家財保険と言葉が違うことで混乱する方もいるかもしれませんが、どちらも同じ意味だと考えて大丈夫です。
※火災保険は建物・家財の両方または片方のみにかけることのできる保険です。
今回は、火災保険で知っておきたい7つのポイントをご紹介しました。
火災保険といっても、加入している保険や補償だけでなく、補償の受けられる範囲や対象が異なります。
また、火災保険につけるオプションを考えても、多くの補償があるので、火災保険は安易に加入せずしっかり自分に合った補償を選んで無駄なく加入することが大切です。