
マンション上階から水漏れ被害!賠償の相場は?火災保険の補償実例紹介。
ファイナンシャルプランナー 西村浩至
【経歴】 私は、大学卒業後にIT関係の事業所や会計事務所で、約20年間、主に経理関係の業務に携わってまいりました。業務のかたわらFPの勉強を続ける中で、世の中には知らないと損をしてしまう事例がたくさんあることに気づきました。そのような知らないと損をしてしまう知識をわかりやすく世の中に発信していきたいという思いからライター活動をするようになり、現在に至ります。
今回は、火災保険の「水濡れ」補償について紹介していきましょう。
水濡れって水災と何が違うの?という方も多いと思います。
それでは、まず「水濡れ」と「水災」の違いから紹介します。
火災保険「水濡れ」「水災」の補償の違い
水濡れ(水漏れ)とは、給排水設備の事故や他人の戸室で生じた事故に伴う漏水などによる損害の補償のことです。
水災とは、台風や集中豪雨による洪水などの水災による損害を補償するものです。
水濡れで補償されるもの
- 天井裏の水道管が破損し水漏れ損害が発生した場合
- 給水管が破裂して室内が水浸しになり家財が壊れてしまった場合
水災で補償されるもの
- 集中豪雨で自宅が床上浸水した場合
- 台風で近くの川が氾濫し、床上浸水して、壁の張り替えが必要な場合
- 豪雨等で山が土砂崩れを起こし、家が押し流されてしまった場合
同じ水の損害であっても、どんな原因で損害を受けたのかによって、火災保険で必要な補償は変わってきます。
高層マンションの場合、水災の被害が無くても、水漏れ被害の可能性はあります。
水の損害と一括りにせず、必要な補償を選んで火災保険に加入しましょう。
火災保険の「水濡れ」で補償される事例を紹介
火災保険の「水濡れ」は、状況によって補償されないものがあります。
水漏れの被害にあった場合に、「水濡れ」で補償されるのかされないのかについて解説していきます。
火災保険の水濡れで補償されるケース
- マンションの上の階で水漏れがあり、家財が濡れて壊れてしまった(家財)
- 上の階から水が漏れてきて自分の部屋が汚されてしまった(建物)
- 給水管が破裂して室内が水浸しになってしまった(建物)
- 天井裏の水道管が破損し部屋が水漏れしてしまった(建物)
- 上階からの水漏れで壁や床が水浸しになり、壁紙や床板を張替えが必要になってしまった(建物)
- 台所のシンクが詰まり水があふれ、絨毯・ソファがダメになってしまった(家財)
水濡れで補償された口コミ・実例を紹介!
上の階との間にある配管に亀裂が入ったようで、そこから水漏れして、家の中に入ってきたので補償してもらいました。
- 保険対象:家財
- 受け取った保険金額:3.3万円
- 受け取るまでの期間:2週間程度
- 保険会社:宅建ファミリー共済
上の階の部屋で水漏れがあったらしく、管理会社の方から下の階の部屋である自分に被害がないか連絡がきて、よく見てみると、ベランダの壁のほうに水漏れがきていて被害を報告し保険金を受け取りました。
- 保険対象:建物
- 受け取った保険金額:10万円
- 受け取るまでの期間:1か月程度
- 保険会社:日新火災
下水管の油づまりで1階が水浸しになり補償してもらいました。
- 保険対象:家財
- 受け取った保険金額:300万円
- 受け取るまでの期間:1週間くらい
- 保険会社:損保ジャパン
※アンケート概要「火災保険で保険金を受け取った方への補償内容に関する調査」ウィズマネ編集部,調査期間2020年2月~2020年3月、2021年3月.
上の階から水漏れした場合の補償・賠償金額の相場は?
マンションの上の階から水漏れした場合の補償・賠償金額の相場は、どのような損害が発生したのかによるため明確な相場金額はわかりません。
しかし、ウィズマネ編集部で「実際に火災保険で保険金を受け取った方へのアンケート」を実施した際の水漏れによる受取保険金額を見てみると15,000円~30万円ほどの金額範囲での回答が多かったです。
水漏れの被害範囲が少ないと15,000円~3万円ほどで、水漏れによって壁や天井、家電などに損害が発生した場合は15万円~30万円ほどの保険金額は支払われたという回答が多かったです。
水漏れ被害にあった場合は、どこに被害があったのかをしっかり把握することで被害に応じた補償を受けることができます。
万が一、水漏れ被害にあってしまった場合、加入している火災保険の保険会社または保険代理店に連絡し、修理業者から見積りを取って修理という流れとなります。
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火災保険の水濡れで補償されないケース
- マンションで水漏れを起こし、階下の部屋の天井を汚してしまった
- 以前、給排水設備から漏水したことがあり、修理業者等から配管の交換を勧められたが、応急処置だけして配管は交換せず、同じ箇所から再度漏水し水漏れ損害が発生してしまった
- 老朽化により水道管に亀裂が生じ、長時間かけて水が滴り落ち、畳が腐食してしまった
- 自宅に置いてある水槽を誤って倒して水漏れ損害が発生してしまった
- 自宅の浴室で、水道栓を閉め忘れて部屋が水浸しになってしまった
- 自宅の浴室で、水道栓を閉め忘れてしまい、階下に水漏れ損害を発生させてしまった
- 雪が積もっていた箇所が、長く雪が積もったままで水が漏れてきてしまった
- 老朽化で給排水設備に損害が発生してしまった
このように、「水濡れ」損害であれば、全て補償されるわけではありません。
火災保険で補償される「水漏れ」とは、水道管の破裂など給排水設備の事故に伴う部屋の水漏れ損害や、マンションの上階からの漏水などで部屋に水漏れ損害があった場合に補償されるものです。
給排水設備の事故に伴う水漏れ損害であっても、予測が可能な場合(以前給排水設備から漏水したことがあるなど)や突発的でない場合(長時間かけての畳の腐食など)は補償されません。
また、給排水設備自体の修理費についても補償されないのでご注意ください。
自分が原因で下の階に水漏れ損害を与えた場合でも、火災保険の「水濡れ」で補償してもらえない可能性があります。

FP
下の階の水漏れ賠償を補償する特約とは?
火災保険の「水濡れ」補償は、保険対象に発生した水漏れ損害を補償するものなので、保険対象ではない階下に発生した損害には保険金は支払われません。
そのため、自宅の浴室で水道栓を閉め忘れたなどで、階下に水漏れ損害を与えてしまった場合でも、基本的にその損害を補償するのは下の階の住人となります。
しかし、下の階の住人が火災保険に加入していなかったり、水濡れの補償を付けていなかったりする場合に、階下の水漏れ損害の賠償責任を負う可能性があります。
その場合には、火災保険の「個人賠償責任補償特約」を付けていれば補償してくれます。
※火災保険によって名称が「個人賠償責任危険補償特約」など変わりますのでご注意ください。
「個人賠償責任補償特約」とは?
個人賠償責任補償特約は、他人にケガ等をさせたり、他人の物を壊したりしたときの法律上の賠償責任を負う場合に保険金が支払われるものです。
下の階の被害に関しても「個人賠償責任補償特約」を付けていれば保険金が支払われます。
分譲マンションで共用部分の水道管からの水漏れで区分所有者の専有部分に水漏れ損害を与えてしまった場合は、「賃貸建物所有者賠償責任危険補償特約」や「マンション共用部分賠償特約」を付けていれば、補償されます。
火災保険の「水濡れ」補償は、上の階の他人が起こした水漏れや、給排水設備が原因の水漏れ損害を補償してくれるものです。
自分の損害は自分で補償するのが火災保険の基本となります。
火災保険の「水濡れ」補償を付けるのか削るのかしっかり検討しましょう。