結婚していない場合、守る家族がいないことも多い分、生命保険の必要性を感じにくいですよね。
しかし人生はいつ何が起きるか分からないため、「生命保険で備えておいた方が良いのか」と考えることもあるでしょう。
今回は独身に生命保険が必要かについて解説していきます。
独身でも生命保険は必要?あると備えられる4つのリスク
独身でも生命保険が必要なのか気になりますよね。
特に20代や30代のように若い方の場合、「まだ必要はないのでは?」と思う方も多いでしょう。
実は独身でも生命保険に入っておくと、様々なリスクに備えられます。生命保険があることで備えられるリスクをご紹介します。
万が一死亡してしまうリスク
万が一死亡してしまうリスクが挙げられます。特に若い世代の独身の方は、健康で体力も充実しているため、死亡のリスクは低めです。
しかし絶対に死亡しないとは限りません。
独身で死亡した場合、両親など残された家族が葬儀を催したり、賃貸住宅を退去したりするためのお金が必要です。
葬儀情報サイト「いい葬儀」を運営する株式会社鎌倉新書の『第5回お葬式に関する全国調査』では、2022年時点の葬儀費用の平均は110.7万円とされています。
葬儀だけでも多額のお金が必要であるため、万が一の場合のお金を準備するために生命保険があると良いでしょう。
病気やけがで医療費を負担するリスク
病気やケガで医療費を負担するリスクもあります。突然大きな病気やけがに見舞われた場合、病院への入院や治療が必要です。
日本では働き方やライフスタイルに関係なく、誰もが何らかの公的健康保険に加入しています。健康保険に入っている場合、病院の窓口などで保険証を提示すれば、年代に応じて1~3割の自己負担で治療を受けられます。
ただ大きな病気やけがを治療する場合、医療費が高くなる分、自己負担分も大きくなりがちです。
あまりにも高額な場合は、高額療養費制度で負担を軽くできますが、差額ベッド代など入院生活に必要な分や先進医療の技術料は、公的保険制度の対象外です。対象外の分を支払うには事前に民間の保険で準備しておく必要があります。
突然働けなくなるリスク
突然働けなくなることも備えるべきリスクです。現役で働いている場合、病気やけがに襲われると、まとまった日数で休まなければいけません。
会社員でも基本的に休んだ分は給料が発生しないため、収入が減って生活に困る危険もあります。
特に気を付けなければいけないのがフリーランスや自営業者です。
会社員の場合は、まだ傷病手当金があり、休んでも収入減少を抑えられる仕組みがあります。しかしフリーランスや自営業者は会社員ほど保障が手厚くないため、所得補償保険などで収入が減った場合に備えなければいけません。
老後資金に困るリスク
独身のまま年を取った場合、老後資金に困るリスクも出てきます。特に貯金がなかったり、働き方が不安定だったりする場合は、60代以降に国民年金だけで暮らしていくのは大変です。
国民年金の受給額だけで足りない分は、終身保険や個人年金保険などを早めに準備しておくことで用意できるでしょう。
独身で準備するべき生命保険の死亡保障額は平均でいくら?
独身で生命保険を用意するのなら、死亡保障額をいくらにすれば良いのかで悩みますよね。
実は同じ独身の方であっても、子どもがいるかいないかで必要な保障額が変わってきます。
独身で子どもがいない場合
完全に1人暮らしの独身の場合、死亡保障額は200~300万円程度で十分です。
完全な独身者が亡くなった場合、主に葬儀費用やお墓を建てる資金、賃貸住宅の退去費用が必要となります。
葬儀費用は上記の平均を見ると110.7万円ですが、近年では家族葬のように安くできるものも多いです。家族葬はコストを抑えれば50万円程度でも催せます。加えてお墓についても、すでに実家でお墓を持っていれば納骨費用だけで問題ありません。
独身で子どもがいなければ、最高でも200~300万円を用意すれば足りるケースも多くあります。
独身だが子どもがいる場合(シングルマザー・シングルファーザー)
一方独身でもシングルマザーやシングルファーザーのように子どもがいる場合は、死亡保障を多めに用意してばなりません。子どもを残したまま亡くなった場合、子どもが一人前に成長するまでの教育費や生活費を残す必要があります。
文部科学省が発表した『令和3年度子供の学習費調査』によると、子ども1人当たりの3歳から高校3年生までの教育費は合計574万円~1838万円必要ということでした。(574万円は幼稚園から高校まで全部公立に通った場合)
何らかの理由で死亡した場合、子どもが滞りなく高校まで卒業できるように、教育費だけでも最高で2000万円は必要となります。その他必要な生活費まで残すことを考えると、最低でも3000万円は死亡保障として残すと良いでしょう。
独身が生命保険を選ぶ5つのポイント
生命保険には様々な商品があるため、独身の立場でどう選ぶべきかに悩みますよね。
選び方が分からない場合は、以下の5点を基準に比べたり検討したりしてみてください。
【最優先】突然の病気やけがへの対策を
独身の方にとって何よりも優先したいのが、突然の病気やけがへの対策です。
独身で特に若い方は、ある程度年を重ねた方に比べて収入が低かったり、貯金が不十分だったりします。
そんな中で病気やけがで治療に専念しなければならない場合、医療費の支払いが発生するでしょう。ただ治療期間が長引いた場合、医療費がかさむ分、出費額も高くなりがちです。
特に差額ベッド代のような公的医療保険でカバーされない費用もあるため、日頃から医療保険で備える必要があります。医療保険に加入していれば入院給付金が1日単位でもらえる分、差額ベッド代や食事代も準備できます。
収入の減少にも備えが必要
病気やけがによって収入が減るリスクにも備えが必要です。治療期間が長引いた場合、仕事を休まなければいけません。
仕事を休むと、会社員や公務員であれば傷病手当金がもらえますが、もらえる金額は最高でも過去12ヶ月の標準報酬月額の2/3であるため、収入の減少は避けられません。
治療期間中は医療費負担も発生するため、余計に手元からお金が減っていきます。生命保険には病気やけがによる収入の減少に備えられる就業不能保険や所得補償保険もあるため、万が一に備えて考えると良いでしょう。
死亡保障は最低限でOK
死亡保障については、完全に独身の方であれば最低限の金額で問題ありません。独身の場合はすでに家庭のある既婚者と異なり、パートナーや子どものために多額のお金を残さずに済みます。
葬儀費用やお墓への納骨費用、遺品整理の費用などをカバーできる数百万円程度を用意できる保障で十分です。ただし離婚して自身で子どもを養っている場合は、既婚者と同じく数千万円の保障は残すと良いでしょう。
自営業者・フリーランスは綿密な準備が不可欠
自営業者やフリーランスの場合は、独身でも綿密な準備が欠かせません。自営業者などは国民健康保険制度に加入しますが、会社員などと異なり傷病手当金がもらえない決まりです。しかも仕事した分だけ収入がもらえる働き方である分、仕事を休んだ場合は収入が入ってきません。
大幅な収入減も予想されるため、医療保険だけでなく収入減少に対応できる保険もセットで用意すると良いでしょう。収入の減り幅を少しでも抑えられるように、貯金を用意しておくのもおすすめです。
独身女性は女性特有の病気への備えも大事
独身女性の場合は女性特有の病気への備えも必要になります。乳がんや子宮がんのような女性特有の病気は、30代から一気に罹患率が高まるためです。
特に医療保険を選ぶ際は、女性特有の病気向けの保障が主契約で付いているものを選んだり、特約で追加したりすると良いでしょう。加えて働き方に関係なく、収入減少への対策も欠かせません。
【年代別】独身で最低限入っておくべき保険
独身で最低限入っておくべき保険は色々とある上に、年代によって必要な種類が異なります。
年代別で独身に最低限必要な保険をご紹介しましょう。
20代の場合
20代の場合は、何よりも医療保険が重要です。20代は就職して間もない分、給料も上の年代に比べて少なかったり、貯金も不十分だったりします。
貯金額については、金融広報中央委員会の『令和4年 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]』では、平均で176万円・中央値で20万円です。
30代の平均494万円・中央値75万円と比べても非常に少ない金額であるため、もし病気やけがで医療費が必要な場合、痛い出費になるでしょう。
治療目的の出費を少しでも和らげるべく、医療保険は欠かせません。加えて収入減少の影響を抑えるためにも、就業不能保険や所得補償保険への加入もおすすめします。
30代の場合
30代の場合も、20代と同じく医療保険を最優先するべきです。
30代となると20代に比べて体力が衰えたり健康面のリスクが増したりします。生活習慣に起因する病気のリスクも徐々に高まるため、生活習慣病特約を準備しておくのもおすすめです。
加えて女性の場合は、乳がんなど女性特有の病気のリスクが30代から高まります。出来れば30代になる前から女性特有の病気向けの保障を準備しておきましょう。
なお病気やけがが原因で働けなくなった場合に備えて、就業不能保険など収入減少への対策を用意することも20代と同じく重要です。
40代の場合
40代になると、20代や30代の場合以上に健康面のリスクが高まりやすいです。独身であればやはり医療保険の保障を手厚くするべきでしょう。
特にがん・脳血管疾患・心疾患の三大疾病は40代以降に罹患率が上がります。がん保険や三大疾病特約で早めの対策が必要です。女性については30代の場合と同じく、乳がんなど女性特有の病気への対策も欠かせません。
ちなみに40代になると持病を抱える人も増えてきます。持病がある場合は、引受基準緩和型や無選択型の保険も検討すると良いでしょう。
50代以降の場合
50代以降は40代までの場合よりもさらに病気やけがのリスクが高まります。同時に60代以降の老後の時期が徐々に近づいて来ているため、リタイア後の生活や万が一の場合についても考える必要があります。
健康面については、やはり医療保険を最も優先的に考えるべきでしょう。
三大疾病の罹患率は引き続き高いため、医療保険の保障を手厚くしたり三大疾病特約を付けたりするのがおすすめです。
合わせて老後のことを考えると、個人年金保険を用意すると良いでしょう。公的年金の支給額だけで足りない場合も生活費を補うため、老後の生活を楽にする助けになります。
万が一の場合の死亡保障については、子どもがいない場合は若い頃と同じく最低限の金額で契約すれば問題ありません。ただし独立前の子どもがいる場合は、1000万円単位の死亡保障を準備しておくことがおすすめです。
独身におすすめな6種類の生命保険
独身で契約すべき6種類の生命保険をご紹介します。
医療保険
医療保険は、独身の場合で最も重視するべき生命保険と言えます。医療保険は病気やけがで入院や手術が必要な場合、必要な費用を給付金として支給する保険です。
具体的には入院日数に応じて支払われる入院給付金や、手術の際の手術給付金などの保障があります。ほかにも多くの特約を追加でき、通院治療に使える通院特約や、三大疾病の場合に追加で給付金がもらえる三大疾病特約などです。
医療保険の給付金は、公的な医療制度の対象外となる入院生活中の費用や手術費用をカバーしてくれます。公的医療制度と併用すれば、極力金銭面の負担を抑えながら治療に専念できて安心です。
がん保険
がん保険は医療保険でも、がんの治療に特化しています。がんを理由とした入院や手術に必要な費用を、給付金や保険金の形で支給してくれる保険です。
医師からがんの診断を受けた場合も一時金がもらえます。加えて給付金の支払限度日数がないケースが多かったり、加入後の免責期間(保障が受けられない期間)がなかったりするのも特徴です。
就業不能保険・所得補償保険
就業不能保険と所得補償保険は、両方とも収入の減少に備えられます。特に病気やけがなど保険会社が指定する状態になった場合、毎月決まった金額の保険金を受け取れる内容です。
ちなみに就業不能保険は生命保険会社が、所得補償保険は損害保険会社が提供しています。
就業不能保険は最大で決まった年齢までずっともらえる代わりに、免責期間が60日や180日など少し長めに設定されている点に注意すべきです。
一方所得補償保険は免責期間は1週間と短いですが、支払い期間が最大1年と短いのがデメリットです。
死亡保険
死亡保険は生命保険で最も中心的な種類で、定期保険と終身保険があります。両方とも、死亡や高度機能障害の場合に保険金がもらえるのが基本的な特徴です。
保障期間は定期保険が契約時に決まった期間まで、終身保険が一生涯です。また保険料も定期保険は安く、終身保険は高い傾向にあります。定期保険については安い金額で高い保障をかけられますが、更新時の年齢に応じて保険金が上がる点に注意が必要です。
ちなみに終身保険は解約時も返戻金を受け取れます。特に解約のタイミングが遅いほどもらえる額も増えやすいため、大きな出費に備えられるのも強みです。
個人年金保険
個人年金保険は、主に老後の生活費を確保する上で役立ちます。老後に受け取る公的年金だけでは生活が不安な場合に備えられる保険です。
特に貯金が不十分で老後資金に不安がある方は、活用をおすすめします。
特に終身年金であれば、生存している限りずっと年金を受け取れて安心です。ほかにも確定年金は死亡した場合に遺族が満期まで受け取れるため、独立前の子供がいる場合に残せます。
介護保険・認知症保険
介護保険は介護に必要な費用を給付金で受け取れる民間保険です。割引で必要なサービスを受けられる公的介護保険と異なり、介護サービスに必要な費用を受け取れます。加入についても公的保険と異なり強制ではありません。
一方認知症保険は介護保険でも認知症に特化したものです。認知症の治療が必要な場合や診断を受けた場合に給付金がもらえます。
独身の生命保険でよくある質問
独身の生命保険でよくある質問と回答をご紹介しましょう。
独身で生命保険はいらない気がするのですが?
独身で若くても、突然の病気やけがで長期の療養が必要になる場合があります。加えて収入が減少した場合は生活の心配も出てくるため、最低でも医療保険や就業不能保険、所得補償保険は考えておくことをおすすめします。
さらに年配の方の場合は、老後の生活費を用意するためにも個人年金保険があると良いでしょう。
生涯独身で過ごすつもりですが生命保険は必要ですか?
生涯独身でも生命保険は必要です。年齢に関係なく病気やけがに見舞われるリスクがあるため、医療費負担を和らげる意味でも医療保険が役に立ちます。加えて先々の万が一や大きな出費を考えると終身保険もおすすめです。
独身でも生命保険料控除は受けられますか?
生命保険料控除は年齢や既婚・未婚に関係なく、支払った分の生命保険料に応じて税金が安くなる仕組みです。
独身の場合は生命保険の受取人を誰にすれば良い?
独身の場合、生命保険料の受取人は親や兄弟姉妹を指定するケースが一般的です。肉親で特に受け取ってほしい方を指定すると良いでしょう。
独身の生命保険加入率はどのくらいですか?
公益財団法人生命保険文化センターの『令和元(2019)年度 生活保障に関する調査』によれば、独身者の生命保険加入率は6割程度です。
独身でも生命保険があると安心!
独身で健康でもいつ病気やけがに襲われたり、お金の不安が出てきたりするか分かりません。
日頃から生命保険を準備しておくと、何か起きた時の対策になります。今の生活で不安を感じる時は、生命保険で備えるのも良いでしょう。