資金計画

住宅ローンは年収の何倍まで借りるのがベストなのか

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(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

住宅ローンについて、年収の何倍程度が適切なのか気になっている人は多いようです。

結論から言えば、年収だけでローン額を決定するのは難しいです。

とはいえ、「どのくらいの家が買えるのか」「どのくらいの借り入れができるのか」などを判断する材料のひとつとしては活用の意義があります。

年収と借り入れ額について見ていきましょう。

年収の何倍まで借りていいのか

冒頭でも触れたように、年収だけで住宅ローンの金額を決めることはできません。

しかし、年収が高ければより多くの返済ができることも確かです。

実は、物件価格に関しては「年収の何倍の家を買ったのか(年収倍率)」についてデータがあります。

以下が住宅金融支援機構による年収倍率のデータです。

【購入物件ごとの年収倍率(全国平均)】

  • 土地付注文住宅 7.2
  • 注文住宅 6.5
  • マンション 6.9
  • 建売住宅 6.7

出典:住宅金融支援機構「2018年フラット35利用者調査」

年収倍率は新築の場合で6~7倍となっています。

住宅金融支援機構の同調査では、物件価格の1~2割が頭金の平均となっています。

1割の頭金を入れると仮定して年収倍率を住宅ローンに換算すると、「年収の5~6倍の住宅ローンを組んでいる人が多い」という推測が導けます。

年収倍率に頼りすぎはNG

年収の5~6倍の住宅ローンを組んでいる人が多いようですが、これはデータ上の平均になります。

仮に年収500万円なら2,500~3,000万円の住宅ローンを組むのが「平均」となりますが、基準である「年収額」は変動するかもしれません。

収入がいつまで続くかは年齢や勤め先の会社によって違ってくるため、年収のみを基準として住宅ローンを組んでしまうのは危険があります。

そこで考慮したいのが、収入に対する返済金の割合です。

返済比率なら、収入が減ったとしても、返済のイメージがつかみやすいのでおすすめです。

返済比率の出し方は以下の通りです。

【返済比率の計算式】

1年間に支払う金額÷年収×100

【返済比率の例】

  • 年収 500万円
  • 年間の住宅ローン額 120万円

120万円÷500万円×10024%

住宅ローン以外のローンがあるときは、それも含めて計算

このように計算すると、収入のうちいくら位が自由に使えるのかが感覚的にわかります。

一般的に、返済比率は25%以内が良いとされていますが、安全性を重視するなら20%程度を目標としてもいいでしょう。

返済比率をうまく活用するには、一般的な数値としてではなく、自身の生活に即して考えることが重要です。

例えば上記の例でいえば、返済比率が24%ですので、年収のうち、それ以外に使用できるのは76%です。

「水道光熱費と通信費で10%」、「趣味や交際費、衣料費などで20%」、「保険料が5%」・・・・・・などと割合を確認していくと、家計のやりくりが具体的になります。

このやりくりが難しいようなら、その額の住宅ローンを組むのは考え直したほうがいいといえるでしょう。

なお、計算式には「年収」と表記しています。

実は「年収」は税制上、社会保険料などを差し引く前の金額を指します。

よりリアルに住宅ローン後の家計を具現化するなら、社会保険料等を差し引いた「手取り額」で計算するのがいいでしょう。

年収の5~6倍の借り入れで、返済比率はどのくらいか

住宅ローンの借入額を、年収の5~6倍とした場合、家計はどうなるのでしょうか。

返済比率で確認していきたいと思います。

【住宅ローン試算条件】

  • 全期間固定金利
  • 金利 1.3
  • 返済期間 30年、35
  • 年収は手取り額とする

【事例1 年収500万円】

返済期間30

返済期間35

借入額

年収の5

年収の6

年収の5

年収の6

2,500万円

3,000万円

2,500万円

3,000万円

年間返済額

100.8万円

121.2万円

90万円

106.8万円

返済比率

20.1%

24.2

18%

21.3%

【事例2 年収650万円】

返済期間30

返済期間35

借入額

年収の5

年収の6

年収の5

年収の6

3,250万円

3,900万円

3,250万円

3,900万円

年間返済額

132万円

157.2万円

116.4万円

139.2万円

返済比率

20.3%

24.1%

17.9%

21.4

【事例3 年収800万円】

返済期間30

返済期間35

借入額

年収の5

年収の6

年収の5

年収の6

4,000万円

4,800万円

4,000万円

4,800万円

年間返済額

162万円

194.4万円

142.8万円

171.6万円

返済比率

20.2%

24.3

17.8%

21.4%

千円以下切り捨て

35年返済で上記の条件ならば、どのケースでも年収の5倍の借入額で返済比率は20%以下です。

年収の6倍でも約21%に抑えられますので、返済の安定性は高いでしょう。

返済期間を30年にした場合でも、返済比率が25%を超えるようなことはありませんが、20%を目標とする人にとっては、少し高いと感じる割合かもしれません。 

繰り返しになりますが、自身の家計状況に合わせ、適した割合を見つけていく姿勢が大切です。

そのように借入額を調整していけば、適切な住宅ローンを組むことができるでしょう。

手堅く借入したほうがいい人

平均である「年収の5~6倍の借り入れ」について、返済比率を確認しました。

とはいえ、返済比率は「30%以下ならそれでいい」という人から「できれば25%以下」「低ければ低いほどいい」という人までさまざまでしょう。

借入額を抑制ししたほうがいいのはどんな世帯なのでしょう。いくつかご紹介します。

子どもがいる、もしくは子どもが増える可能性がある世帯

子どもがいると、成長とともに食費や通信費が増えますし、教育費の負担も増していきます。

また、これから子どもが増える世帯では、産休や育休で収入が減る可能性があります。

時短勤務まで含めると数年単位で収入が減る可能性があります。

なお、従来「育休」と言えば妻が取得するものでしたが、近年は夫が育児休暇を取得する事例も増えているようです。

夫婦で育児休暇を取得したい場合は、育児休業制度を確認し、世帯収入がどの程度になるかをしっかり確認しておきましょう。

収入が減る可能性がある

収入のうち残業手当やボーナス割合が多いと、収入が不安定になりがちです。

また、転職や独立を考えている人も、収入が減る可能性がありますので、住宅ローンの借入額は抑制したいです。

将来的なリスクがある

定年時に残る住宅ローン残高が大きい人や、親の介護リスクなど、将来のリスク要因がある人も、住宅ローンを控えめにしておいたほうがいいでしょう。

思い切って住宅ローンを借りてもいいケースはあるか

手堅く借入をしたい人がいる一方、「借入額は少し大きくなるけれど、理想の物件を購入したい」と考える人もいると思います。

返済リスクだけを考えるなら、借入は控えめにするのが正解です。

ただし中には、少しだけなら背伸びをしてもいい場合もあります。

まず、年収が上がるケースです。

多くの企業では、勤続年数が多いほど給料が上がります。

絶対的なものではなく、期待しすぎは禁物ですが、まだ若く、収入の伸びしろが大きい人は多少の年収アップを見込んでもいいでしょう。

また、育休中の妻(夫)が職場復帰する世帯なども、ある程度の年収アップを見込んでよいでしょう。

思い切って借入するなら、金利は「固定金利」がおすすめです。変動金利の方が金利水準は低くなりますが、代わりに金利上昇のリスクがあります。

もしも「変動金利の低い金利でないと返済できない」借入なのだとしたら、それは借入額が身の丈に合っていないと言わざるを得ません。

「少し」の背伸びが、大きな背伸びにならないよう気を付けましょう。

なお、思い切った借入の結果、返済が苦しくなってしまうことも考えられます。

そのような場合には、転売で家計が破綻するのを防ぐことができます。

万が一の場合にそなえ、資産価値の高い物件を選びたいです。

少なくとも、高額なのに「一般的には不便な場所にある」「デザインが独創的で、万人受けしない」といった物件は避けたいもの。

借り入れでリスクを負う分、物件は手堅い選択をしていきましょう。

まとめ 借入額よりも返済プランを優先しよう

住宅ローンの借入額を年収の何倍にするかは、返済額を確認したうえで決めるのがいいでしょう。

一般的には5~6倍が多いですが、統計は参考程度にし、ご自身の返済プランを作っていきたいです。

そうすれば、適切な借入額もおのずと見えてくるはずです。

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  • この記事を書いた人

Harumi Yokoyama

ライフプラン応援事務所代表 企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所

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