(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
マイカーローンやクレジットの分割払いは、一般的な購入方法として普及しています。
ただ、住宅ローンを組むときは、同じ「ローン」である以上、審査に一定の影響を及ぼします。
ほとんど影響のないこともあれば、住宅ローンを借りられなくなるほどの打撃になることもあります。
住宅ローンと他のローンの関係について解説します。
他のローンがあっても住宅ローンは組める
他のローンがあるからといって、それだけで住宅ローンが組めなくなることはありません。
ただ、住宅ローンの借入は金融機関からの融資であるため、審査があります。
審査時に他のローンがあることが不利に働くことがあります。
ローンがなくても注意したい、クレジットカードの「キャッシング枠」
「自分は他のローンはないので関係ない」と思っている人もいると思います。
しかし自分ではローンのつもりがなくとも審査対象になっているかもしれません。
それはクレジットカードには「キャッシング枠」があるからです。
キャッシング枠とは、クレジットカードに付帯されているサービスのひとつで、「お金を借りることができる」機能です。
限度額(キャッシング枠)の範囲であれば通常、街中のATMを利用して簡単にお金を借りることができます。
クレジットカードのキャッシング枠は住宅ローン審査において、限度額まで利用(借入)していると仮定して審査されることになります。
クレジットカードの発行枚数はどのくらい?
日本クレジット協会のクレジットカード発行枚数調査によると平成30年3月末のクレジットカード発行枚は、2 億 7,827 万枚で、前年比 プラス2.3%です。
成人している人の数で割ると、1 人当たり 2.7 枚保有していることになります。
平均保有枚数は2.7枚ですが、ポイント目的でクレジットカードを作成したり、レンタルショップの会員証にクレジットカードの機能を付加させたりして、クレジットカードがどんどん増えてしまう人は少なくありません。
特にキャッシング枠は、本人が認知していない借入になる可能性があるので注意したいです。
他のローンがあるときの注意点
マイカーローンや携帯電話の分割払い、家電ローンなど……実際にローンを返済中の人は、他のローンが住宅ローン審査にどう影響するのでしょう。
それを知るためには「返済負担率」を算出するのがおすすめです。
審査に影響を及ぼす「返済負担率」とは
返済負担率は、「総返済負担率」や「返済比率」とも呼ばれます。
内容は、年収に占める年間返済額の割合のことです。割合には元金だけでなく利息も含まれます。
求め方は『(年間の総返済額÷年収)×100』と簡単ですので計算してみましょう。
【返済負担率の例:ケース1】
年収 600万円
年間の総返済額 144万円(住宅ローン)
(144万円÷600万円)×100=24%
返済負担率 24%
一般に返済負担率は多くても30から35%以内、できれば25%以内がいいとされています。
上記の例は24%ですので安全性が高いことがわかります。
年収は同じまま、住宅ローン(年間返済額144万円)以外に年間40万円のマイカーローンもあるとして再計算してみます。
【返済負担率の例:ケース2】
年収 600万円
年間の総返済額 184万円(住宅ローン144万円)、(マイカーローン40万円※)
(184万円÷600万円)×100=約31%
※マイカーローンの年間返済額40万円の内訳は「毎月の返済1.5万円・ボーナス月はプラス11万円」
返済負担率 31%
マイカーローンを加えたことで返済比率が【24%→31%】へ上昇しました。金融機関が住宅ローンの審査をする際は、「この人にお金を貸しても大丈夫か」「貸したら返してくれるか」などをチェックします。
当然、返済負担率が低いほうが、信用されます。
住宅ローン審査の際は、借入額から年間返済額を算出し、返済負担率を計算します。
その場合の適用金利は実際の金利よりもやや高めにするのが一般的です。
住宅ローンを含めた返済負担率を自分で計算するときは、少し高めの金利水準で試算してみましょう。
金融機関は返済負担率をどの程度、重要視するか
返済負担率は審査にどのくらい影響をあたえるのでしょう。
国土交通省が金融機関に対して行った調査において、「住宅ローン審査時に考慮する」とした項目のうち、割合が上位のものをご紹介します。
【審査の際に考慮する項目として、割合が80%を超えたもの】
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- 年齢(借入時・完済時)
- 健康状態
- 担保評価
- 年収・勤続年数
- 連帯保証
- 返済負担率
出典国土交通省 平成29年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書
年齢や健康状態だけでなく、返済負担率も十分に重視されていることがわかります。
もともと住宅ローンの借入割合が年収に対して少ない人は多少返済負担率が上昇しても問題ないでしょうが、「住宅ローンだけで返済比率が30%」といった人は要注意です。
まずは返済比率を事前に確認しておきたいです。
その他のローンを含めると返済比率が高くなってしまう場合は、他のローンを完済、もしくは少しでも減らしたのちに住宅ローンの申請をするといいでしょう。
そこまでしなくても……と思うかもしれませんが、返済負担率を低くしておけば住宅ローンの返済も楽になりますので、検討してみてください。
他のローンの影響で、住宅ローンが組めないケースもある
他のローンは返済比率を押し上げるので住宅ローン審査が厳しくなってしまいます。
しかしそれだけなく、審査が通らないレベルになるケースもあります。
それは信用情報に傷がついている人の場合です。
まず、「信用情報」とはなんでしょう。
信用情報の中身は主に、クレジット・ローンの契約内容や支払い状況のことで、「個人の信用」の実績を客観的に表した情報と考えるといいでしょう。
所定の信用情報機関が情報を有しています。
情報提供について自分に覚えがなくとも、住宅ローンやクレジットカード申し込みの際、信用情報機関に情報提供することを同意しているはずです。
信用情報に傷がつくと、借入が困難に!
住宅ローンの申し込みをすると、金融機関は申込者の「お金に対する信用」を審査します。
その際に信用情報を確認するのです。
例えばクレジットカードの支払いが遅れるとその旨も情報が残ります。
延滞の履歴を「信用情報に傷がつく」と表現します。
信用情報に傷かつくと、金融機関からの信用度が極端に落ちますので借入はできなくなると考えてください。
ただし、信用情報の延滞履歴は一定期間後に消滅します。
履歴が消えるまでの期間は、通常5~7年程度です。
信用情報は確認できる
延滞記録の登録や消滅が、本人に通知されるわけではありません。
そのためは中には、「数年前に残高不足で延滞してしまったが、正確な時期は覚えていない。
あの延滞記録は記載されているのだろうか?」といった人もいると思います。
そんなときは自分の信用情報を確認してみましょう。
履歴を確認することを「情報開示」といいます。情報開示はパソコンやスマートフォンのほか、郵送や信用情報機関の窓口などでも可能です。
500~1000円程度の手数料はかかりますが、不安な人は確認しておくことをおすすめします。
もしも延滞履歴が残っていた場合は、記録が消えるまで住宅ローンの申し込みは避けたほうがいいでしょう。
購入時期が遅くなることで、完済年齢も後ろにずれ込む恐れもありますが、その点は頭金を多くして返済年数を短くすることで解決できるはずです。
マイホームが早く欲しい人にとって、待たなければならないのは辛いことかもしれません。
しかし信用情報に傷がついた状態で住宅ローンの申し込みをしても審査が通る可能性は低く、それならば頭金を貯めるほうが建設的なはずです。
他のローンも合わせて住宅ローンを考えよう
他のローンがある場合は、最初から他のローンも含めた返済負担率で借入額を考えるといいですね。
他のローンを含めると返済負担率が高くなってしまう場合は、他のローンを完済したり、頭金を入れることで借入額を抑えたりすることで、資金計画を調整していきましょう。