(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンを組んでマイホームを購入したら、住宅ローンの返済が始まります。
しかし実際に住宅ローンを組む日や、払い始める日はいつなのでしょう。
住宅購入では、購入手続きや引き渡しに関しては不動産会社やハウスメーカーなどと相談し、住宅ローン続きについては金融機関と話を進めていきます。
つまり、「住宅の購入手続き」と「住宅ローン」の、2つの軸で住宅購入を進めていきます。
両者をすり合わせながら住宅購入の段取りをしなければならないため、混乱しがちです。
資金が必要になるタイミングや住宅ローンを払い始める日について紹介します。
住宅ローン締結までの流れ
マイホームを購入する流れに合わせて、住宅ローンの手続きも進んでいきます。
住宅購入、ならびに住宅ローン締結までの流れを確認します。
住宅の種類によって異なりますので、ここでは建売住宅の場合でみてみます。
【住宅ローン締結までの一般的な流れ(建売住宅の場合)】
購入申し込み
このとき、住宅ローンの事前審査も一緒に行いますので、ここまでにある程度申し込み金融機関の目星をつけておく必要があります。
また、売主によっては数万円程度の申込金を支払います。
購入物件の売買契約を結ぶ
手付金を支払うのが一般的です。手付金は物件価格の5~10%程度のことが多いですが、売主によって異なるので、申し込み前に手付金を確認しておきます。
特別な取り決めなしに支払った手形は「解約手付」と呼ばれ、自己都合で売買契約を破棄した場合に、損害賠償などが発生しない代わりに手付金が返ってきません。
住宅ローン本審査
住宅ローン本審査の際に借入金額や金利プランも確定します。
このときに住宅ローンの払い始めの日も確認しておきます。
なお、注文住宅の場合は住宅ローン融資の前に「つなぎ融資」が発生することがあります。つなぎ融資については後述します。
融資実行日・引き渡し
融資実行日には申込金や手付金を除いた残金を支払い、引き渡しを行います。
新築マンションの購入も、おおよそ同じ流れです。ただしマンションの場合、「修繕積立準備金」「修繕積立一時金」などと呼ばれる費用がかかることがあります。
これらはマンションの大規模修繕や、設備修理・メンテナンス費用のための資金です。
近年は長く、安心して住むために長期的な修繕計画を持つマンションが増えてきます。
そのため、修繕費をより安定して確保するために、入居時に修繕費の一時金を求められることがあるのです。
なお、マンションの日常的な管理を行うための費用である「管理費」の一時金が必要なマンションもあります。
融資実行日とは
「融資実行日」とは、金融機関によって実際に融資が行われ、住宅購入資金が振り込まれる日です。
この日が事実上の住宅購入日です。
不動産会社の担当者・登記を行う司法書士・売り主・買い主が立ち会って融資実行と物件の引き渡しを行います。
【融資実行日に行うこと】
- 書類や金額に間違いがないか、最終確認
- 融資実行・購入物件の決済
- 所有権移転・抵当権設定登記の申請
- 物件の引き渡し(鍵の引き渡し)
住宅ローンの融資実行日と引き渡し日は同日に行うため、不動産会社やハウスメーカーなどの売主と、住宅ローンを申し込む金融機関とで調整を行います。
物件の売主が提供する提携ローンを利用する場合は不動産会社等が日程のすり合わせをしてくれますが、自ら住宅ローンを選ぶ場合は、自身で両者の日程調整をします。
多くは金融機関が営業している平日の日中に行うことになるため、自身のスケジュール管理にも留意します。
ただし、近年は融資実行までインターネットで完結する金融機関もあります。金融機関ごとの差もあるため、融資実行時のタイムスケジュールはよく確認します。
一般的な「住宅ローンを払い始める日」は
無事に融資実行と引き渡しを受けたら、住宅ローンの返済をしていきます。
住宅ローンを払い始める日は金融機関の規定によって決まっており、原則として融資実行日から数えた「翌月の約定返済日」です。
住宅ローンを払い始める日の決まり方
「約定返済日」とは、金融機関が指定する返済日(引き落とし日)のことです。
約定返済日が「毎月20日」のように指定されている場合もあれば、「10日・20日・30日のいずれかの日」のように、複数の候補日の中から選べる銀行もあります。
また、融資実行日のタイミングによっては翌月ではなく、翌々月の約定日になることもあります。
【約定返済日が12日の場合の例】
融資実行日 3月10日 初回支払日 4月12日
融資実行日 3月12日 初回支払日 4月12日
融資実行日 3月30日 初回支払日 5月12日
上記は、融資実行日から約定返済日までの期間が1か月を未満のときは初回支払日が「翌々月」の約定返済日になる例です。
他にも、「融資実行日から所定の日数以内の約定返済日」を任意で選べる金融機関もあります。
融資実行日から初回返済日までの最大日数は大体45~90日程度としている金融機関が多いです。
約定返済日を選べると、自身の状況や考え方に合わせることが可能です。
早く返済を始めたいと思う人は最短日を、「落ち着くまではどんな出費があるかわからないので、返済日まで間があったほうがいい」と考える人は後の約定日を選択することができます。
住宅ローンを払い始める日の注意点
返済日が土曜、日曜、祝休日、12月31日~1月3日など休日にあたった場合は、通常、翌営業日に返済額を引落しが行われます。
また、初回の返済額は通常の返済額と金額が変わります。
利息は日割りで計算するのですが、融資実行日から初回返済日までの返済期間(日数)が、2回目以降の毎月の返済期間(日数)と異なるため返済額が変わるのです。
住宅購入の時期は、住宅購入費だけでなく、引っ越し代や家具購入などで支出が多くなります。
うっかり口座の残高が不足することがないよう、初回返済日と返済額は確実に頭に入れておきたいです。
多くの金融機関では住宅ローン返済者向けのインターネット専用ページを用意しています。ログインすると初回返済日や返済額を確認できますので、確認しておくといいでしょう。
注文住宅の場合はマイホーム完成前から支払いが発生
注文住宅の場合、建物の完成前に土地の購入費用、建築の着工金・上棟金などの支払いが必要になります。
しかし住宅ローンは家が完成した後に締結するものですので、住宅ローンを利用してそれらの費用を支払うことは、原則としてできません。
土地の購入費用や着工金・中間金などを合わせると、大きな金額になりますので、自己資金で賄える人は少ないです。
そのため多くの人は住宅ローン締結までの資金を借りる「つなぎ融資」を活用します。
つなぎ融資の払い始めは
つなぎ融資の払い始めは「住宅ローンの払いはじめと同じ」と考えていいです。
というのもつなぎ融資で借りた資金はそのまま住宅ローンの借入金にスライドできるのです。
ただし、つなぎ融資は住宅ローンよりも適用金利が高い傾向にあります。
そのため利息額がいくらになるかを確認しておきます。
また、利息の支払い方は「つなぎ融資の融資金額から差し控える」「契約時に利息を前払いする」など、金融機関によって取り扱いが異なります。
利息が前払いのときは、前払いするタイミングやその金額についても留意しなければなりません。
さらに、つなぎ融資には次のような注意点があります。
- つなぎ融資の取り扱いがない金融機関もある
- つなぎ融資にも事務手数料がかかる
- つなぎ融資の金利は住宅ローン金利よりも高い
つなぎ融資で借りた資金は住宅ローンの借入額に含めることができますが、金利や事務手数料など留意すべき点も多いですので、慎重に行いましょう。
まとめ 住宅ローンの払い始めは意外と重要
住宅ローンの初回返済日は、金融機関の規定や融資実行日によって異なるため、本審査の申し込みの段階で「融資実行日」と「払い始めの日」を確認しておきます。
住宅ローンの返済額も通常の返済額とは異なる可能性が高いので注意します。
ただでさえマイホーム購入後は忙しい時期です。
忙しさに紛れて初回から残高が不足することのないように気をつけましょう。