監修者
マイホームを持ちたいと希望する方に20年後も家族が笑って過ごせるマイホーム購入を実現するサポートを行う。大手ハウスメーカーにて15年間、家づくりの最前線で年間300件を超える住宅ローンアドバイス、ローン取次業務を経験する。将来の家計を見据えた無理のない家づくり予算を導き出す独自の「家づくり予算診断サービス」はこれからマイホームを購入しようとするお客様に好評を得ている。住宅ローンについても金融機関ごとの審査の傾向を把握した住宅ローン選定のお手伝いなど家づくりをお金の面からサポートしている。机上の理論だけではなく、融資申込から審査対応・融資実行までの実務に精通し、更に家づくりの現場を知る強みを持つ。
【保有資格】ファイナンシャル・プランナー(AFP) 住宅ローンアドバイザー 宅地建物取引士
住宅を購入するには住宅ローンを借りる人が多いでしょう。
通常、ローンでは利息が発生しますが、「金利は低いほうがいい」と考えるのが普通でしょう。
住宅ローンは債務者の自宅を守りたいという心理から、他の融資に比べると返済不能に陥る可能性が低いため、金利が低い傾向があります。
そのため、原則として「住まない」家には住宅ローンが利用できません。
もしも「住まない」家を住宅ローンで購入してしまうとどんなペナルティがあるのでしょうか?
また、事情が変わってマイホームに住めなくなってしまった場合の対処法について解説します。
住宅の目的によって申し込むローンは異なる
同じ「住宅」でも、使用目的によって利用するローンは異なります。住宅を購入するときに使えるローンを3種類ご紹介します。
1 住宅ローン
住宅ローンは生活の拠点となる、「マイホーム」専用のローンです。
特徴は金利が非常に低い点で、住宅要件や返済期間などの条件を満たせば住宅ローン控除の対象となる点も大きな魅力です。
さらに、金利が低いにもかかわらず、返済期間中金利が変わらないフラット35を活用すれば、金利上昇リスクも回避できます。
なお、フラット35を提供する住宅金融支援機構は、経営理念のひとつに、「マイホーム購入における安定的な資金提供」を挙げています。
フラット35はこのような経営理念から、数年前までは比較的融資がおりやすいローンでした。
しかし、最近は以前に比べると審査も厳しくなっています。
2 セカンドハウスローン
セカンドハウスはマイホームとは別に、別荘や週末のみ利用する自己所有の家を指します。
多くは住宅ローンを利用することができず、セカンドハウス専用のローンを活用します。
セカンドハウスの特徴は、金利が住宅ローンよりも高いこと、そして比較的審査が厳しいことの2点です。また、住宅ローン控除も活用できません。
なお、フラット35はセカンドハウスに対応しています。
セカンドハウスの借り入れにフラット35を利用する場合も一般の銀行のセカンドハウスローンと変わらず審査は厳しめとなっています。
セカンドハウスローンの審査が厳しいのは、自宅以外に住宅を必要とする理由が妥当かどうか?セカンドハウスローンを借りて購入した家を他人に貸そうとしているのではないか?など用途を厳しく問われる側面もあります。
3 不動産投資ローン
投資物件用の購入時に利用するローンが不動産投資ローンです。
事業用ローンの一種で、住宅ローンに比べると金利は高く借入額も大きくなるケースが多いです。投資物件への融資となりますので、物件の収益性など事業として融資しても大丈夫かという観点での審査が行われます。
住宅ローンであれば、返済する人の返済能力が重視されますが、不動産投資ローンの場合は物件の収益性や市場価値が重視されます。
「住まない」家の購入に住宅ローンを利用した場合のペナルティ
住宅ローンは原則としてマイホームを購入するときのみに利用できるローンです。
しかし、住宅ローンの低い金利を目当てに、不動産投資用の物件をマイホームと偽って審査を申し込む事例もありました。
住宅ローンを悪用する事例は、近年多発し話題になったので、記憶している人もいるでしょう。
住宅ローンの悪用が発覚すると、金融機関から借入金の一括返済を求められる可能性が高いです。
では、住宅ローンがマイホーム専用のローンであることを知らずに、投資用物件で住宅ローンを利用してしまうとどうなるのでしょう。
たとえ知らなかったのだとしても、住宅ローンの契約書に使途はマイホーム購入に限るという趣旨の文言もあり、それの説明も受けて契約をするので、「知らなかった」という言い訳は基本的には通用しません。
なので、一括返済を迫られる可能性が高いです。
また、住宅ローンを借りてマイホームを購入したけれど、返済中に転勤で引っ越すことになり、空き家になるマイホームを他人に貸して家賃を得るケースも注意が必要です。
転勤はやむを得ない事情とはいえ、金融機関に無断で他人に貸して家賃収入を得ると契約違反でやはりペナルティを受ける可能性が高くなります。
もし転勤になる時に他人に貸したい希望がある場合、事前に金融機関とどういった対応が可能か相談することをお勧めします。仮にそういった相談があったからという理由だけで不利益を被ることはありません。
いずれにしてもうっかりでは済まない金額ですので、十分に注意しましょう。
特殊な住宅の場合はどんなローンを使えばいい?
既述の通り、マイホーム以外に住宅ローンは利用できません。
しかし建物の用途が一つではないケースではどうなるのでしょう。
マイホーム以外の用途がある場合
「自宅兼店舗」「自宅の一室を事務所として利用している」「賃貸併用住宅」など、マイホームとマイホーム以外の用途が混在している住宅では住宅ローンは利用できるのでしょうか。
結論としては、金融機関により取り扱いは異なります。主に2つの取り扱いをご紹介します。
なお、ここでは住むための部分を「住宅部分」、店舗や事務所など事業目的に部分を「事業用部分」と呼んで区別していきます。
1 住宅部分に該当する金額のみ住宅ローンが利用可能
まずは、住宅部分は「住宅ローン」、事業用部分は「事業資金融資」を受ける方法です。住宅部分だけでも住宅ローンが利用できれば返済の負担は大分違ってくるでしょう。
ただし、住宅ローンと事業用融資を別々の金融機関で借り入れると借入時期のすり合わせが必要になります。
しかし、現実的には複数の金融機関が住宅ローンと事業融資を同じ物件を対象に融資することはややハードルが高いため、同じ金融機関が両方を融資するのが現実的かもしれません。
どちらのローンもきめ細やかな対応をしてくれる金融機関を選びましょう。
住宅ローンと事業用融資が一緒に受けられる金融機関なら、手続きの煩雑さはかなり軽減できるでしょう。
2 条件を満たせば住宅部分のみ住宅ローンが利用できることも
「建物全体の面積のうち自宅部分が半分以上」「事業用部分も自己使用」など、一定の条件を満たせば、事業用部分も含めた全体を住宅ローンで融資できることがあります。
住宅ローンで全体の融資ができない場合、店舗部分は事業用融資を借りる必要がありますが、事業用融資は住宅ローンより金利が高くなるケースが多いです。だからこそ、全体を住宅ローンで借りることはメリットがあります。
事業用と併用される場合、金融機関によって扱いが異なりますので、早い段階で金融機関とご相談されることが得策です。
ちなみに、フラット35では併用住宅の場合、次の要件を満たせば利用可能ですが、融資可能なのはあくまでも自宅部分のみになります。
- 住宅部分の床面積が全体の1/2以上であること
- 店舗や事務所の部分は、住宅ローン申込者(もしくはその同居者)が生計を営むために自己使用するものであること
- 「住宅部分」と「事業用部分」との間が壁や建具などで分かれた設計になっており、原則として相互に行き来できること
- 「住宅部分」と「事業用部分」を一つの建物として登記(一体登記)できること
参考フラット35「一部分を店舗や事務所として利用するような住宅(内部で行き来できるもの)は融資の対象になりますか。」
併用住宅の住宅ローンの取り扱いの詳細要件は金融機関ごとに異なります。上記のように、間取りや床面積で住宅ローン融資が受けられるか変わってくることがありますので、設計段階から要件を確認しておきましょう。
なお、「あと少し住宅部分が多ければ建物全体が住宅ローンの対象となる」という場合、本来は店舗や事務所部分である箇所を自宅と偽る例があるそうです。
当然そのようなことはやってはいけません。発覚すればペナルティとして一括返済が求められる可能性があります。
二世帯住宅の住宅ローン
二世帯住宅は、世帯ごとに住宅部分が分離しています。完全分離の場合、一方の世帯にとって「住まない」部分が生じますが、住宅ローンの取り扱いはどのようになるのでしょう。
ここでもフラット35を例に挙げると、「別々の住宅ローンを申し込む」「1本の住宅ローンを申し込む」の2通りとなります。
具体的には次のように分けられます。
- 登記が別々(区分登記)で互いの世帯が分離した設計になっている場合
⇒別々に住宅ローンを申し込み
- 登記が一体となっており、互いの家が内部で行き来できるようになっている場合
⇒1本のローンで申し込みが可能
区分登記を行うには、単純に世帯が完全に分かれていればいいというものではなく、構造的にも独立している必要があるため、設計段階から区分登記をする前提で計画をしなければいけません。
まとめ 住宅ローンはマイホームのためのローン
住宅ローンにおける「住宅」は自己所有で、かつ生活の基盤となる建物を指すなど、定義が厳しいです。
もしもセカンドハウスを、住宅ローン金利を想定して購入してしまうと大変です。
実際にはセカンドローンが適用され、返済時の負担が予想外に大きくなってしまうかもしれないからです。
「住まない」建物を購入するときは、どの種類のローンを利用するかにも留意しておきましょう。