監修者
マイホームを持ちたいと希望する方に20年後も家族が笑って過ごせるマイホーム購入を実現するサポートを行う。大手ハウスメーカーにて15年間、家づくりの最前線で年間300件を超える住宅ローンアドバイス、ローン取次業務を経験する。将来の家計を見据えた無理のない家づくり予算を導き出す独自の「家づくり予算診断サービス」はこれからマイホームを購入しようとするお客様に好評を得ている。住宅ローンについても金融機関ごとの審査の傾向を把握した住宅ローン選定のお手伝いなど家づくりをお金の面からサポートしている。机上の理論だけではなく、融資申込から審査対応・融資実行までの実務に精通し、更に家づくりの現場を知る強みを持つ。
【保有資格】ファイナンシャル・プランナー(AFP) 住宅ローンアドバイザー 宅地建物取引士
住宅ローンの返済方法のひとつに「元金据置」というものがあります。
元金据置返済は金融機関の同意のもと、毎月返済額を一時的に抑えることができる返済方法です。
返済額を抑えることができるのは大きなメリットですが、利用においては注意点もあります。
元金据置返済とは
元金据置は端的に言えば所定の期間、元金はそのまま(据置)とし、毎月返済時に利息だけ支払うことです。
ただし元金を据え置いた分、元金据置期間が終了した後の返済額は「それ以前の返済額より高くなる」、もしくは、「返済期間が長く」なってしまいます。
つまり、総返済額は利用しなかった場合と比較すると高くなる点に注意が必要です。
実はこの「元金据置」には2種類あります。
ひとつは、住宅ローンの返済とアパートの家賃との二重返済の負担を軽減するためのものです。
ふたつ目は、住宅ローン返済中の方が何らかの事情により返済が苦しくなり、金融機関と相談の上、一時的に返済額を下げる目的で行うものです。
元金据置① 二重返済の負担を軽減するための元金据置
【土地を買って、注文建築する場合などに生じる住宅ローンの返済とアパート家賃の二重返済を回避するための元金据置】
マンションや建売住宅、中古物件など売買金額の全額を支払えば、すぐに鍵が貰えて、引越し可能になる取引の際には、住宅ローンを実行しても、アパート家賃と住宅ローンの返済が二重になることはありません。(タイミングによっては、一ヶ月分程度、重なることはあります)
ところが、土地を購入して、その土地に注文建築を行う場合や中古物件購後にすぐにリフォーム工事を予定している場合など、物件購入後に工事が絡む場合、アパート家賃と住宅ローン返済が二重になる期間が生じます。
土地購入や中古物件購入の場合、物件の購入代金の全額を支払って、自分のものになって、初めて工事に着手できます。その為、工事の予定があるから実際の引越しは数か月先の予定であっても、物件購入のために住宅ローンを融資実行する必要があります。
そして、通常であれば、融資実行後、翌月には返済がスタートします。
その為、住宅ローンの返済と家賃の二重払いが生じることになります。
もちろん一時的な二重払いなら支払えるという方はそのままでも問題ありません。
一時的でも二重払いは苦しいという方も少なくありません。
そんな時、予め金融機関と打ち合わせのうえ、最長1年間程度、住宅ローンの返済を利息のみとする対応が可能になります。
元金の返済を据え置くので「元金据置期間」と表現されています。
ただし、事前に伝えないとできないので、住宅ローン審査申込書にチェック欄があるので、忘れずにチェックを入れましょう。(申込時に入れ忘れてもその後、手続きの過程で申し出るチャンスはあります)
元金据置を選択した場合も返済期間は変わらないため、据え置いた期間分短くなった返済期間で返済をしなければいけないので、毎月の返済額は想定より高くなります。
元金据置② 返済が苦しくなった場合に一時的に返済額を下げるための元金据置
【住宅ローン返済中に失業や業績不振により収入が減少したなど返済が苦しくなった場合に家計改善を後押しするための元金据置】
金融機関は住宅ローンの審査で、十分に返済能力を見定めているとはいえ、返済は長期にわたるため、想定外の事態が発生し、返済が苦しくなる時もあるでしょう。
最近で言えば、感染症の蔓延により、事業環境が一変し影響を受けた方も少なくありません。
そういった何らかの事情で返済が苦しくなった場合、返済中の金融機関に相談をして、提案される対応策のひとつに「元金据置」があります。
これは、返済中の方が希望して選択するというよりも苦しい状況や今後の見通しなどを把握して、金融機関内で検討し、決裁を経て、提案される方法のひとつです。
収入が増える見込みがあるとか、自宅を売却に出すことは決心したけれど、売却活動に時間が必要になるなど、この対応の結果、住宅ローンの通常の返済が可能になる、完済される見込みがある場合の選択肢となります。
金融機関としては、もちろん、一日も早く通常の返済が可能になる状況に復活してほしいので、その見込がないとこの提案はされない可能性もあります。
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元金据置返済のメリットと注意点
元金据置返済のメリットと注意点を詳しく紹介します。
元金据置返済のメリット
大きなメリットは、所定の期間とはいえ返済額を減らすことができる点です。
アパート家賃との二重払いは負担が大きすぎる場合でも、何らかの事情で返済が苦しい場合でも返済額を抑えることが可能です。
ここからは、返済が苦しい場合のケースに絞って、元金据置返済について触れたいと思います。
返済が苦しい場合の選択肢として「借り換え」や「売却」があります。
それらの特徴を紹介したうえで、元金据置返済と比較してみます。
【借り換え】
現在の住宅ローンよりも低い金利の住宅ローンに借り換えができれば、返済額を抑えることができます。
ただし借り換え時には審査がありますので、収入が減っている状態だと借り換え自体が難しいでしょう。
仮に借り換えがうまくいったとしても借り換えは事務手数料や抵当権設定登記なその借り換え諸経費が必要です。
諸経費を考慮すると、借り換えを行って一時的にはかえって生活が苦しくなってしまうかもしれません。
金利だけで飛びつかずに諸経費や借り換え後のメリットも含めて検討していきましょう。
【売却】
売却益を住宅ローンの返済に充てる方法です。
しかし売却するためには抵当権を解除しなければならず、売却価格が住宅ローン残高を下回る場合は自己資金で差額を補わなければなりません。
また、引っ越し代や新しく賃貸物件を借りる費用など転居費用もかかります。
売却価格が住宅ローン残高よりも高ければ選択の余地ありますが、そうでない場合は慎重に実行の可否を判断しなければなりません。
借り換えや売却と比較すると、元金据置返済は現状の住宅ローン契約を維持しながら当面の返済額を減らすことが可能です。
また、大きな諸経費は不要です。諸経費は不要か、もしくは所定の条件変更手数料ですみます。さらに売却のように、慣れ親しんだ我が家を手放す必要もありません。
ただ前述のとおり、金融機関内の手続きが必要なため、希望しても必ず対応してもらえるとは限らないことは注意が必要です。
元金据置返済の注意点
元金据置返済の注意点を3つ紹介します。
1:金融機関への交渉が必要になる
元金据置返済は、当然に選択できる返済方法ではありません。
なかには当初から元金据置返済がメニューに組み込まれた住宅ローンもありますが、数は少ないです。
原則は金融機関に交渉し、金融機関によって認められた場合のみ選択できる方法です。
なお、フラット35で返済額の減額や返済期間の延長措置を受ける場合は次の3つの要件を満たさなければなりません。
- 「離職や病気等の事情により返済が困難である」
- 「年収、月収の状況が所定の基準以下」
- 「返済方法の変更により、今後の返済を継続できる」
特に重要なのが、最後の要件でしょう。
元金据置返済を行っても、最終的に返済が難しいなら、実施する意義を見出せないでしょう。
元金据置返済を行うことが、最終的に完済につながることを金融機関に理解してもらわなければなりません。
その意味では、金融機関の同意を得るのは簡単ではないかもしれません。
2:利息の支払いは継続する
返済額を減らすことができますが、返済がゼロになるわけではありません。
返済当初は返済金に占める利息の割買いが高いですので思ったほどは返済額が減らない可能性があります。
3:据え置くだけあって返済の免除ではない
据置期間中、元金が減ることはありません。
その状態で返済期間がそのままならば、据置期間終了後の返済額は増加します。
据置した分返済期間を延長すると、返済額に影響は生じないかもしれませんが、その分完済年齢が上がってしまいます。
元金据置返済の相談ができないケースにも注意
なお、原則として返済を滞納してしまうと元金据置返済の相談は難しいです。
滞納が生じることで住宅ローンの取り扱いが、任意売却や競売など、より深刻なケースに分類されてしまう可能性が高いからです。
その段階に移行してしまう前に返済方法を相談しなければなりません。
元金据置返済が使える可能性があるのは
元金据置返済が使える可能性があるのは次のような人です。
- 利息なら確実に支払える
- 収入が減ってはいるが利息が支払えるだけの収入はある人
- 返済が苦しいのが一時的な状態
- 収入減・もしくは支出増の状態が一時的で、いずれ通常の返済ができる人
- 最終的に返済の見通しがつく
- 元金据置返済の期間が終わった後に返済額が高くなったり、返済期間が延びたりしても対応できる人
まとめ 返済が苦しくなったら早めに動くことが重要
返済が苦しくなってしまった場合の対処法として、元金据置返済のメリットと注意点を紹介しました。
決断を先延ばしにすると取れる手段は少なくなってしまいます。
不安を感じたときは、早めに借入先金融機関に相談しましょう。