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富裕層の海外移住は資産いくらから|10億・30億・100億の損益分岐

富裕層の海外移住で節税になるかは、純資産10億円以上が損益分岐の目安です。海外移住の損得は、出国税(含み益への所得税15.315%)・移住の初期費用・移住後の生活費上昇を合計した移住コストが、日本に残った場合の税負担を上回るかどうかで決まります。出国税の仕組みや主要国の税制比較といった制度面は海外移住で税金は減るのか|出国税と主要5カ国の税制比較で扱っているため、ここでは資産10億・30億・100億円の3段階で「自分の資産規模で移住が合理的か」を試算します。

富裕層の海外移住が得になる資産規模|10億円が損益分岐の目安

富裕層が海外移住で節税できる資産規模は、出国税と移住後コストを差し引いた損益分岐で判断します。その目安は純資産10億円です。「海外移住すれば節税できる」という見方は、2015年の出国税導入以降は単純には成り立ちません。有価証券等の含み益が1億円以上ある人が移住する場合、その含み益に対して所得税15.315%が課税されるためです。

損益分岐の目安

  • 資産10億円未満:移住コストが税負担の軽減幅を上回る可能性が高い
  • 資産10億〜30億円:条件次第で5〜10年で回収可能
  • 資産30億円超:移住による税メリットが明確化

出国税の対象者・対象資産・納税猶予制度や、取得価額が不明な場合の5%ルール、シンガポール・ドバイなど主要国の税制比較は海外移住で税金は減るのかで扱っています。ここからは、その制度を前提に、資産規模ごとに移住が合理的かどうかを試算します。

海外移住を現実的に検討しうる層は、ここ数年で着実に拡大しています。野村総合研究所「純金融資産保有額別の世帯数と資産規模の推計」(2025年2月13日発表)によれば、純金融資産5億円以上の超富裕層は2023年時点で11.8万世帯、その純金融資産総額は135兆円に達します。2021年(9.0万世帯・105兆円)から世帯数で約31%増えており、移住という選択肢を検討する母集団そのものが広がっています。

出典:野村総合研究所「純金融資産保有額別の世帯数と資産規模の推計」(2025年2月13日発表)

Elbrus Concierge
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「海外移住=節税」という単純な図式は成り立ちません。出国税を払い、移住先で生活コストが上がり、それでも10年後にプラスになるかを計算してから判断すべきです。特に資産5億円以下の方は、移住より日本国内での税務戦略を優先したほうが合理的なケースがほとんどです。

移住にかかる総コスト|出国税・初期費用・生活費上昇の内訳

損益分岐の判断には、移住で発生する3種類のコストを把握する必要があります。出国税、移住の初期費用、そして移住後の生活費上昇です。資産規模が同じでも、含み益の大きさや移住先によって総額は大きく変わります。

出国税|含み益に対する所得税15.315%

出国税(国外転出時課税)は、有価証券等の含み益が1億円以上ある人が対象で、含み益に所得税15.315%が課税されます(住民税は1月1日前の転出で対象外)。含み益の規模別の試算は次のとおりです。

有価証券の含み益規模別 出国税額の試算
有価証券時価 取得価額(想定) 含み益 出国税(所得税15.315%)
5億円 2億円 3億円 約4,600万円
10億円 5億円 5億円 約7,600万円
20億円 10億円 10億円 約1.5億円
50億円 30億円 20億円 約3億円

※住民税は1月1日前に転出すれば対象外で、実務上は15.315%が基本です。対象者の要件・対象資産の範囲・納税猶予制度・5%ルールなど制度の詳細は海外移住で税金は減るのかで扱っています。出典:国税庁「No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」

移住の初期費用|3,000万〜2億円

移住の初期費用は、ビザ取得のための投資額によって大きく変わります。主な費目の目安は次のとおりです。

海外移住の初期費用の目安(費目別)
項目 費用レンジ 備考
弁護士・移民コンサルタント 200万〜1,000万円 国・ビザの種類により変動
ビザ取得のための投資 8,000万〜11億円 シンガポールGIPが最高額
渡航・引越し費用 300万〜1,000万円 家財量、美術品輸送の有無による
現地での住居初期費用 1,000万〜3億円 購入の場合は数億円規模
税務・法務アドバイザリー 500万〜2,000万円 移住前後の税務手続き

※上記はカテゴリ別の目安です。正式な費用は各国の移民弁護士・移民コンサルタントへの確認が必要です。

移住後の年間生活費|2,000万〜1.6億円

移住後の生活費は、日本での生活と比べて上昇するケースがほとんどです。特に住居費と教育費の差が大きく表れます。

移住先4カ国の年間生活費の比較(家族4人想定)
項目 シンガポール ドバイ モナコ マレーシア
住居費(賃貸/年) 1,500万〜4,000万円 800万〜2,500万円 3,000万〜1億円 300万〜800万円
教育費(子2人/年) 500万〜1,500万円 400万〜1,200万円 700万〜2,000万円 200万〜600万円
生活費・その他 1,000万〜2,500万円 800万〜2,000万円 1,500万〜4,000万円 500万〜1,600万円
合計(年間) 3,000万〜8,000万円 2,000万〜5,700万円 5,200万〜1.6億円 1,000万〜3,000万円

出典:Numbeo「Cost of Living」(公開データ)および各都市の不動産仲介会社の公開情報を基に編集部作成

教育費はインターナショナルスクールで年間200万〜600万円、ボーディングスクールを選ぶ場合はさらに年間1,000万〜2,000万円が加わります。日本での生活費との差額が、損益分岐を左右する大きな変動要因になります。

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見落とされやすいのが、出国税は一度きりですが、生活費の上昇は移住している限り毎年続くという点です。損益分岐の計算では、出国税のような一時コストと、生活費差のような継続コストを分けて10年単位で積み上げることが重要です。

資産規模別の損益分岐シミュレーション|10億・30億・100億円

ここからは資産10億・30億・100億円の3段階で、移住が合理的かを試算します。前提は移住先シンガポール、家族は夫婦+子ども2人、有価証券の含み益率50%です。移住後の生活費から逆算した必要資産の考え方とあわせて読むと、自分の資産帯での判断材料になります。

資産10億円のケース|移住メリットは限定的

資産10億円の移住コスト試算(10年間)
項目 金額
出国税(含み益5億円×15.315%) 約7,600万円
移住初期費用 約1〜2億円
生活費増加分(年間1,500万円増×10年) 約1.5億円
移住コスト合計(10年) 約3.3〜4.3億円

一方、日本に残った場合の税負担を計算します。資産10億円を年率5%で運用し、配当・売却益に約20%が課税されると仮定すると、年間約1,000万円の税負担となり、10年で約1億円です。

つまり資産10億円では、移住コスト(3.3〜4.3億円)が日本での税負担(10年で約1億円)を大きく上回ります。この規模では移住メリットは限定的です。

資産30億円のケース|移住メリットが明確に出始める

資産30億円の移住コスト試算(10年間)
項目 金額
出国税(含み益15億円×15.315%) 約2.3億円
移住初期費用 約1.5〜3億円
生活費増加分(年間2,000万円増×10年) 約2億円
移住コスト合計(10年) 約5.8〜7.3億円

日本に残った場合、資産30億円を年率5%で運用すると、年間運用益は約1.5億円です。これに対する税負担は年間約3,000万円、10年で約3億円となります。

さらに相続を考慮すると、税負担の差はより大きくなります。一定の要件を満たして移住先で相続が行われれば、日本の相続税負担を抑えられる可能性があります。10年間の損益だけならほぼトントンですが、相続まで含めると移住メリットが見え始めるのがこの資産帯です。

資産100億円のケース|移住が合理的な選択になる

資産100億円の移住コスト試算(10年間)
項目 金額
出国税(含み益50億円×15.315%) 約7.6億円
移住初期費用 約3〜5億円
生活費増加分(年間3,000万円増×10年) 約3億円
移住コスト合計(10年) 約13.6〜15.6億円

日本に残った場合、年間運用益約5億円に対する税負担は年間約1億円、10年で約10億円です。相続税まで含めれば、移住によって回避しうる税負担の総額は数十億円規模に達する可能性があります。移住コスト約15億円を差し引いても、この資産帯では移住が合理的な選択になり得ます。

なお、相続税の試算は法定相続人の構成によって大きく変動します。また、被相続人・相続人がともに10年を超えて日本に住所を持たないなど一定の要件を満たさなければ、国外財産であっても日本の相続税の課税対象となります。移住による相続税の軽減は、こうした要件を満たす場合に限られる点に注意が必要です。具体的な税額は税理士・国際税務の専門家への確認をおすすめします。

Elbrus Concierge
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30億円を超えると、出国税を払ってでも移住する価値が出てきます。特に次世代への資産承継を見据えている方は、相続まで含めた差額が大きくなります。ただし、家族全員が移住に同意し、長期にわたって日本に戻らない前提を共有できているかが、判断の分かれ目になります。

見落とされやすい判断ポイント|居住者判定と相続

富裕層の海外移住で節税になる資産規模は純資産10億円以上が目安ですが、その税メリットが実現するかは「移住後に日本の非居住者と認められるか」で決まります。家族の居住地や日本の持ち家といった要素を見落とすと、移住しても日本居住者と判定され、想定した節税効果が得られません。

日本居住者と判定されると税メリットは消える

日本の所得税法では、「住所(生活の本拠)」を有する者などを「居住者」として全世界所得に課税します。「住所」は以下の要素で総合的に判断されます。

日本の居住者判定で考慮される主な要素
判定要素 日本居住者と判定されやすいケース
滞在状況 日本での滞在が長く生活の本拠とみなされる(日本には「183日以上で居住者」のような明確な日数基準はなく、総合的に判断される)
住居の状況 日本に持ち家があり、いつでも住める状態
家族の居住地 配偶者・子どもが日本に居住
職業・事業 日本国内での事業活動が主たる収入源
資産の所在 資産の大部分が日本国内にある

出典:国税庁「No.2875 居住者と非居住者の区分」

日本居住者と判定されると、移住先の税制優遇を受けられないだけでなく、二重課税が発生する可能性があります。日本と移住先の租税条約や外国税額控除によって二重課税の一部は調整されますが、調整しきれない負担が残るケースもあります。なお、海外口座情報がCRS(共通報告基準)により日本へ自動報告される仕組みや、出国前後の届出・手続きの実務は海外移住で税金は減るのかで扱っています。

非居住者として認められるためのポイント

  • 日本の滞在日数を年間90日以内に抑える(推奨は60日以内)
  • 日本の自宅は売却または賃貸に出す
  • 配偶者・子どもも一緒に移住する
  • 日本国内の役員・代表者の地位を退く
  • 移住先の銀行口座を主たる決済口座にする

特に注意が必要なのは「家族の居住地」です。本人だけ移住して配偶者や子どもが日本に残る場合、「生活の本拠は日本にある」と判定されるリスクが高まり、相続税の面でも不利になります。

Elbrus Concierge
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損益分岐の試算でプラスが出ても、家族が日本に残っていれば日本居住者と判定され、相続税も日本基準で課税されかねません。資産規模の損得だけでなく、家族全員の居住地と将来の相続時期までの年数を逆算した設計が、判断の前提になります。

検討前に確認しておきたいポイント

Q1. 海外移住で節税メリットが出るのは資産いくらからですか?

出国税・移住初期費用・生活費上昇を差し引いた純額で見ると、純資産10億円以上が損益分岐の目安です。10億円未満は移住コストが税負担の軽減幅を上回りやすく、30億円超でメリットが明確化、100億円規模では相続税まで含めて数十億円規模の差が出る可能性があります。

Q2. 資産30億円でも10年でほぼトントンと試算されるのはなぜですか?

出国税(約2.3億円)と移住コストの合計(5.8〜7.3億円)が、日本に残った場合の10年間の運用益課税(約3億円)と拮抗するためです。差が明確に開くのは相続を含めた場合で、移住の判断は「運用益の節税」より「相続税の軽減」を主目的に置くと合理性が見えやすくなります。

Q3. 家族の一部だけ移住しても税メリットは得られますか?

配偶者や子どもが日本に残っていると、「生活の本拠は日本にある」と判定され、移住先の税制優遇を受けられない可能性が高まります。相続税も日本基準で課税されるため、税メリットを実現するには家族全員での移住が前提になります。

Q4. 資産規模が大きいほど移住は割に合うのですか?

その傾向があります。移住初期費用や手続きコストは資産規模に比例せず固定的に発生する一方、相続税の軽減幅は資産規模が大きいほど拡大するためです。出国税は含み益に比例しますが、相続税回避の効果がそれを上回る資産帯で、移住の合理性が高まります。

富裕層の海外移住が得になるかは、出国税・移住コスト・生活費上昇を差し引いた純額で決まり、純資産10億円以上が損益分岐の目安、30億円超で明確になります。移住ありきで考えるのではなく、生活費から逆算した必要資産を把握し、出国税や国別税制の詳細は海外移住で税金は減るのかで確認したうえで、国内での資産運用や相続対策と並べて検討することが現実的です。国内に拠点を残す選択肢として、スマートホームスーパーヨット競走馬オーナーといった資産の持ち方もあります。

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